お金持ちを示す言葉の一つに、富裕層というものがあります。
大企業の社長や資産家などのイメージもあったりしますが、統計データとして富裕層の区分を定義したものがいくつかあります。
今回は、日本における富裕層の意味とその割合及び保有額について見ていきます。
富裕層の定義
富裕層という統一的な定義は存在しませんが、よく用いられるもの1つが野村総合研究所によるもので、年収ではなく保有している金融資産額によって定義しています。
外部リンク(参考元):
『野村総合研究所、日本の富裕層は133万世帯、純金融資産総額は333兆円と推計 | ニュースリリース | 野村総合研究所(NRI)』
https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2020/cc/1221_1
野村総合研究所によれば、世帯の金融資産の保有額に応じて、下図のように5つの階層を定義しています。
上図は金融資産の階層とそこに属する日本の世帯数を面積比で表した図です。
マス層が全体の8割近くを占めていて、アッパーマス層以上が残りの2割になることが分かります。
1億円以上をもつ富裕層・超富裕層が合わせて2.5%(1/40)もいるというのは、感覚的に多い気がしますが、このデータは「世帯あたり」であることに注意が必要です。
また、このデータは不動産などの実物資産を含めず、金融資産での推計となっています。一般に金融資産は実物資産に比べて現金化しやすいため、「すぐに使える蓄え」を基準にしているとみなせます。
金融資産と実物資産については以下の投稿で整理しています。
富裕層の保有資産量
金融資産階層の定義と世帯数がわかったところで、次に各層でどのくらいの金融資産額を保有しているのか見てみましょう。
先ほどの三角形を底面に、金融資産保有額の平均を高さとして3次元的に描いた図が以下のものです。
視覚化すると、お金持ちにどれだけの富が集中しているかがよく見えます。
左の図では平均額(=高さ)を数値で表しています。例えば準富裕層の平均金融資産保有額は7461万円であることが分かります(準富裕層の定義からも5000万~1億円の間に収まることが確認できます)。
右の図は見る角度を変えたもので、世帯数(=底面積)に加え、各層ごとの全保有金融資産額(=体積)を記載しています。例えば、富裕層+超富裕層は全体の2.5%の世帯で、全世帯の保有総額の21.4%を占めていることが分かります。
貧富の差の拡大
前項の図をみて「金持ちはもっとみんなに分配すべきだ!」とは私は言いません。
日本が資本主義社会である以上は、貧富の差が生まれて当然であり、ある意味では貧富の差を容認することで経済成長する仕組みであるともいえるからです。
ここ数十年の中国がいい例になります。中国は社会主義国家ですが、1990年代に経済分野に限定して自由化に舵を切り、市場経済を導入しました。
それによって、それまで貧乏なイメージがあった中国は目覚ましい発展を続けて、2010年には日本のGDPを抜き世界第2位となり、さらに2028年にはアメリカを抜いて1位になるという予測も出ています。
しかしその裏で貧富の差が非常に拡大してしまった現実があります。
資本主義社会、自由経済は貧富の差が拡大されるようにデザインされています。
資産を持つ者にお金は流れてきてより裕福に、持たざる者はより貧しくなっていきます。
貧富の差が問題ではなく、貧富の格差がいっそう拡大してしまうことが問題ですので、国は貧富の差を均すのではなく、拡大してしまうのを抑え再分配する仕組みを作って、逐次メンテナンスする必要があります。
まとめ
富裕層の定義の1つを紹介し、日本における世帯数と資産額の分布を見てきました。
残念ながら、資本主義はお金がお金を生み格差が拡大していくようにデザインされていてます。
近年、投資はもはやブームではなく、1つの時代の流れというべきでしょう。そして、誰もがアッパーマス層や準富裕層を目指せる再現性が高い方法も、書籍やブログに多く紹介されています。
ただ、ここで見てきたデータは保有資産であり、お金があればあるほど幸せかというと、必ずしもそうではないと思います。
自分や大切な人の幸せにつながるようなお金との付き合い方を、引き続き探していきましょう。
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