お金の起源が石や貝で、それが貴金属のコインとなり、やがて紙幣が使われるようになった。この流れはなんとなく理解している方は多いと思いますが、その理由や背景にこそお金の仕組みが隠れています。
前回は、物々交換の問題点を解決する「仲立ち」として、お金が生まれたことをみてきました。
今回は、貨幣から流通貨幣(=通貨)になるまでの流れとその条件について考えてみます。
流通貨幣(=通貨)の3条件
お金の機能を満たす存在の中で、どのようなものが広く使われる通貨となるのでしょうか。それには以下の条件があるといわれています。
①みんなが認める価値がある
お金は価値交換の仲立ちをする存在ですから、みんながその価値を認める必要があります。そこらへんの石では難しいです。これは物質的な価値はもちろん、みんなの信用による価値であっても条件を満たします。
②みんなが容易に利用できる
持ち運びやすい、数えやすいなど、みんなが利用できるものである必要があります。今でこそ電子マネーは広く使われるようになりましたが、ネット環境や電子デバイスが広く普及していない地域や時代であれば、流通しないでしょう。
③十分に供給できる量がある
流通範囲において十分な供給量が必要です。たとえばダイヤモンドなどの宝石は、他2つの条件を満たすと考えられますが、希少であるために、みんなが通貨として使えるほど流通しません。
これら、3条件を”ある程度”満たすお金の形として、金・銀・銅などの貴金属貨幣が流通するようになります。
貴金属貨幣の問題点
貴金属貨幣のはじまりは、紀元前2000年頃メソポタミア文明での銀で計量により価値を決めていたといわれています。鋳造した貨幣のはじまりは、紀元前7世紀頃リュディア(現在のトルコあたり)のエレクトロン貨という金銀合金といわれています。
そこから長い間、文明/王朝/国の興亡や経済圏の盛衰により、あらゆる貴金属貨幣が誕生しては消えてきました。その要因の1つとして、貴金属貨幣は通貨の3条件のうち「十分に供給できる量がある」に少し問題がありました。
【貴金属貨幣】
○:みんなが認める価値がある
○:みんなが容易に利用できる
△:十分に供給できる量がある
貴金属は硬貨として加工もしやすく、新規に産出することもできましたが、産出ペースには限界がありました。そのため、経済圏・経済規模の急速な成長に供給が追い付かなくなる問題が立ちはだかりました。
紙幣の流通
貴金属貨幣が供給不足に悩まされる時代が続く中、17世紀頃イギリスでお金は次の形に進化します。
当時イギリスでは金が通貨として使われていました。貯めた金を家に置いておくと盗難の可能性もあったので、人々は金細工商人の金庫で預かってもらうようになりました。金を預かる際に商人は、顧客に「金の預かり証」を渡していました。
この「金の預かり証」は、貴金属貨幣よりも利便性が高く、金の代わりに通貨として使われるようになります。預かり証は、商人のところへもっていけば、対応する量の金と交換できるため、みんなの信用により価値が担保されています。また、貴金属貨幣よりも容易に多く持ち運びができ、計算もしやすいものでした。
【金の預かり証】
○:みんなが認める価値がある
◎:みんなが容易に利用できる
△:十分に供給できる量がある
しかし、このままでは、金の量=預かり証の量であるために、供給量の問題は解決されていません。これがこの後、あるイギリス商人の悪知恵によって解決し、現代の紙幣につながっていきます。
まとめ
貨幣が通貨として利用されるための条件として、「みんなが認める価値がある」「みんなが容易に利用できる」「十分に供給できる量がある」の3つがあることを見てきました。
これらの条件を満たす形を求めて、お金は石や貝→貴金属貨幣→金の預かり証と姿を変えてきました。しかし、経済成長についていけるほどの供給量を確保できないという問題が、人類を長く悩ませました。これの解決が現代紙幣の仕組みにつながっていきます。
通貨の3条件は現代においても重要であり、よりよい形を求めていまだに進化を続けています。電子通貨や仮想通貨(=暗号資産)などは、新しいお金の形として普及するのか、動向を見守っていきましょう。
次回は、通貨における供給量不足問題を図らずも回避した方法をみていきます。
コメント