お金の仕組みってどうやって生まれたの?⑤形を失うお金

お金のカラクリをさがす ♦おかね

 お金の起源が石や貝で、それが貴金属のコインとなり、やがて紙幣が使われるようになった。この流れはなんとなく理解している方は多いと思いますが、その理由や背景にこそお金の仕組みが隠れています。

 前回は、金融危機と現代通貨に至るまでの軌跡をみてきました。

 今回は、お金のデジタル化と新しいお金の形をみていきたいと思います。

デジタル技術との融合

 ニクソンショックで金との結びつきを失い、ただの紙切れとなった紙幣ですが、IT技術の進歩によりお金は「もの」ですらなくなります。

 20世紀末以降、急速に発展したIT技術により、電磁的な記録に加えて通信の技術が発展しました。

 これにより銀行預金は、預けた現金(紙幣・硬貨)の記録に加え、通信により振込や送金など決済機能を持つようになりました。

 これは「現金通貨」に対して「預金通貨」と呼ばれ、もはや現金を介さずにそのままデータの形でやりとりされる、新しいお金の形です。

デジタルマネー

 お金は重さゼロの「デジタルデータ」に姿を変え、光の速さで動かせるようになりました

 さらにICT技術の発展により、ICカードやスマートフォンと組み合わせることで、電子決済はさらに利便性が向上します。

 公共料金の支払いや給与の支給だけでなく、日常の買い物までデータで完結するようになり、キャッシュレスの裾野は広がりつつあります。

現代のお金の形

 現金通貨と預金通貨との関係は、金と預かり証の関係に似ています。

 流通している預かり証の量よりも実際の金の量が少なかったのと同様に、全預金データの合計額より実際の現金(紙幣と硬貨)の合計額が少ないです。

 経済全体に供給されている通貨の総量を表す指標の一つに「マネーストック(マネーサプライ)」というものがあり、日本のマネーストック(マネーサプライ)は日本銀行が毎月発表しています。

外部リンク(参考元):
『日本銀行|ホーム > 統計 > 通貨関連統計 > マネーストック』
https://www.boj.or.jp/statistics/money/ms/index.htm/

 上記によると、日本における現金通貨と預金通貨の比率はおよそ1:9となっていて、これは現代におけるお金の9割がただのデータとして存在していることになります。

 これはもはや「お金を預けたものが預金データ」ではなく、「データこそがお金の姿」といえるでしょう。

 極論として、すべてがキャッシュレスになってしまえば、もはや現金が不要となりデータだけで経済が回る世界になることも想像にかたくないでしょう。

仮想通貨は通貨になれるか

 昨今、新しいお金の形として「仮想通貨」という言葉が使われるようになりましたが、これは正確な意味での「通貨」ではないとする意見が根強く、「暗号資産」という言葉で代替されるようになってきています。

 銀行預金や電子マネーは法定通貨と結びついていて、その価値を保っていますが、暗号資産(仮想通貨)にはその価値を保証するものがないのが一般的です。

 法定通貨と暗号資産(仮想通貨)は変動レートにより交換され、前述の理由から非常に激しく値動きします。

 代表的な暗号資産(仮想通貨)であるビットコイン(単位BTC)は、2009年に誕生し、2010年頃には1BTC=数円、2015年頃には1BTC=数万円、2020年頃には1BTC=数百万円と、恐ろしい速さで値を上げてきましたが、単年で見れば1年間で簡単に半値になったりする年もあります。

 中には、1日で価値が42億分の1に大暴落し、一瞬で無価値になった仮想通貨(暗号資産)もあります。

 ビットコインを法定通貨にした国も出始め、2021年9月には中米のエルサルバドル、2022年4月中央アフリカ共和国が続いています。

 暗号資産(仮想通貨)には「国境がない」というメリットがあります。

 スマートフォンなどのデバイスとネット環境があれば、たとえ国をまたいだ送金であっても、為替手数料や送金手数料がかかりません。

 また、暗号資産(仮想通貨)はブロックチェーン技術を中核としたものが多く、それを支えるマイニングという仕組みが、多量の電力をコンピュータで消費するため、環境問題という逆風があることに加えて、ハッキングなどによる流出からマネーロンダリングの温床になっているとの指摘もあります。

まとめ

 IT技術の進歩により、お金は形を持たない「デジタルデータ」へと新たな姿に進化しました。

 近年のキャッシュレスの流れにより、電子決済はますます利便性が向上し、現金(紙幣・硬貨)を使用する場面は着実に減ってきています。

 現金(紙幣・硬貨)のときと同じく、デジタルデータとしてのお金は「お金として他の人が受け取るから」お金として機能する、という共同幻想により回っています。

 一方、暗号資産(仮想通貨)は裏付け資産がなく、価値を保証するもの無しに生まれた存在です。

 暗号資産(仮想通貨)はまだまだ進化の中途にある存在であり、その動向が楽しみです。

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